澄ましたメイドのご主人様。



「平日も,早めに来たっていいからね」

「はい」



私が二つ返事で返したのが不安だったのか,旦那様は申し訳なさそうな顔をする。



「五十嵐くんに話をしたのはほんの少し前だったんだが……タイミングが悪かったね。家のこと,数日前に小耳に挟んだよ。売られるような気持ちでここに来ていても仕方ない」



数日前。

どんな情報網なんだろうと,絶対千藤家に必要のない情報に興味が湧く。

けれど,数日前と言う言葉にひっかかって,素直に楽しめない自分がいた。

お父さん,知られなきゃいいと思ったのか知らないけど,今あなたの罪が増えたよ。



「いえ,ここに来たのは私の意思ですし,私は生活を支える程度で,全ての尻拭いはきっちり父自身で行って貰います」



稼いでいるのが自分だからといって,小遣いでなく家のお金に手をつけたのは大きな間違いだ。

それが,家族·家庭と言うもの。

その反省は,お父さん自身でなければいけない。

だから,ドライだと言われようとも,私はそんなことにまでは手を貸さない。

いつか沢山の仕送りをしたとして,それとこれとは意味が全く異なる。

今大金を手にしても,それをお父さんの失敗に充てるのは親孝行でも何でもない。

お父さんのせいで関係ない旦那様が,申し訳なさそうな顔をするのは,私には困ってしまう。

旦那様は私の言葉を聞いて,そうかと小さく笑んだ。
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