澄ましたメイドのご主人様。
「ねぇ,どうして俺を拒んだの?」



ただ興味があると言った風に,私は尋ねられる。

どうしたものかと思いながら,私は身体を起こした。



「どうしても何も,私には茉悧様を受け入れる理由がございません」



髪型が崩れていないことを確認して,簡潔に伝える。

茉悧様は,私がそう言った行動を,じっと見つめていた。



「でも俺,環境も顔もいいでしょ? 受け入れるどころか,欲しがる理由ならあると思うんだけど」



何もしなくても求められ,求めれば受け入れられる。

それが,この人の常識。

何の他意もない純粋な瞳に,私は確かに拗れていると納得した。

こんな話,したくはないけど。



「私にとって,恋愛やそういった行為は,恋への憧れの次に来る物です。なので,気持ちのない方とどうこうなんて,絶対に無理で嫌です」



世の中の女の子のように,普通に恋してみたい。

大事な人に大事にされて,初めてしたいと思える経験だ。

恋愛感情について語ったり,憧れだなんて意外だと思われそうで。

本当なら,誰にも言うつもりは無かったのに……
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