澄ましたメイドのご主人様。
あなた! と,お母さんがお父さんを咎めるように言う。

私は足を止め,お父さんをみた。



「花蓮が家のためにバイトなんてと,父さんも思ってたが……花蓮がやると言うなら,隣がいい。そっちの方が父さんも安心だし,何より時給もいい」



安心より時給が前に来るところが,少し気に入らないけれど



「隣って……隣?」



我が家の隣には,とても大きく,年中綺麗で見た目の変わらない豪邸が建っている。

どこかの社長とやらで,金持ちの一家が住んでいるらしい。



「あのお家,求人なんてしてるの? 初バイトでそんな大層なところ,やっていけそうな資格とか持ってないんだけど。それに,人探してたとして,私なんかを雇うとは思えない」



本当に広く大きいのだ,あそこは。

使ってない部屋がいくつあろうと,何も不思議には思わない。

我が家より敷地面積の大きい庭だって,いつ見ても綺麗に保たれている。



「それが……実は。あそこの旦那の方,学生時代の友人でな。この間相談を受けたんだよ。花蓮,お前を雇えないかとな」
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