澄ましたメイドのご主人様。
「買い物に行くまで,どうしますか? 茉悧様」



小さな子供のように,2人でただ遊んでいなさいと言われているようなもの。

けれどそこらの子供の遊びとは違い,茉悧様が中心な訳で。

私は特に望みの無さそうな困った主人の顔を覗く。



「ん……なにしよっか」



やはり予想通りの生返事。

それではこちらも困るのですが。

そう,無益と分かりながらも口にしたくなった。



「花蓮,好きなこととか得意なこと,無いの? 話だけでもいいよ」

「得意なこと……少しお待ちください」



得意でないことなら挙げられる。

例えば,笑う……だとか。

愛嬌や愛想に含まれる全てが苦手で,表情すらまともに動かない。

家事や他人が望むような事は大概出来る。

出来ないことを探す方が一苦労で……けれどそんな形の無い事を言うわけにも行かず。

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