澄ましたメイドのご主人様。
「……勉強は,得意です」
記憶力や理解力,そんなことしか浮かばなかった私は,そんな結論に辿り着いた。
「失礼ながら,茉悧様。日頃忙しい印象ですが,頭を悩ませるような教科はありますか?」
言うだけ,なんて何を言ってもつまらなくなってしまう。
得意なことと聞かれて勉強だなんて,面白味もないだろう。
そう考えた私は,少しだけ大きく出た発言をしてしまった。
視線だけで観察し,茉悧様の反応を静かに伺う。
すると,私の思ったどれでもなく。
茉悧様は困ったように笑った。
「俺,基本1番だから。どの教科も,分からないところなんて見つからないかも」
順位がトップで,更に分からないところなど,ない。
偽りない顔でさらりと告げられた言葉に,私は凍り付いた。
「……高校はどちらへ」
「霞」
私立……学園……
あそこは,お金だけの問題じゃない。
入学の時点で,かなりの学力を求められる場所。
運動も,勉学も。
そこを越えようと思うと,国内でも数えるだけ。
「……茉悧様」
「なあに?」
「重ねて失礼ながら……」