澄ましたメイドのご主人様。
ー私に,教えてくれませんか。

許可を貰うや否や,私は頭を下げて即刻家に帰った。

必要なものを小脇に抱え,仕事中だからとまた急いで戻る。

全く逆の打診だったはず。

そんなことは,些細な問題だ。



「まず,数学から。公式も頭に入り,解けないことはありませんが,何故こうなるのか,聞いても調べても上手く飲み込めません」

「……ああ,これか。少し前のところ,開いてくれる?」



やっぱり,分かるのか。

まずは口を挟まず最後まで聞こうと,私は口を閉じる。

けれど,開く必要すら感じないほど,分かりやすい説明に,私は気付けば手を動かしていた。

小学生の頃から当たり前にしていた動きなどもあって,分からなかった事が不思議なくらい,公式を読み解ける。



「ありがとう……ございます」



テスト前には,分かったことなのかもしれない。

だけどここまで簡潔に,深く,分かることはなかったと私は思う。



「あの……!」



文字だけじゃなく,そう言うことなら。



「歴史……も,お願いしていいですか,茉悧様。動機や…………茉悧様,何を笑っているんですか」
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