澄ましたメイドのご主人様。


「だって,この家に麦茶なんて置いてないし,出向いたパーティで麦茶が出されるなんてこともないでしょう?」



つまり……? 



「じゃあ,この家にあるのは例えば」

「緑茶と,紅茶と,工芸茶……あとなんか色々」



麦茶は庶民のものだから許されない,的な話なのだろうか。

緑茶と同じ葉っぱから出来てる飲み物以外は受け付けないって……こと?

製法差別がすごい。

この家の雰囲気を感じてみても,わざわざ麦茶を却下するような人たちには見えなかったのに……



「直接だめだとお断りされたのですか?」

「ううん」



はあとため息をつく。

決して褒められた態度ではないんだろうけど,茉俐様はただきょとんとしていらっしゃる。

それってただ,緑茶か麦茶なら緑茶派ってレベルの話じゃないんだろうかと,私は思った。



「恐らく,旦那様が麦茶を制限されるようなことはまずないと思います。後でお伺いを立てても構いません」



どうしてだめだと思ったんだろう。

麦茶のイメージがだめなのかな。

お父さんが出した損失分の額は,それくらい出せると豪語した人なのに。

たったその一言だけを,躊躇ってしまうのか。



「……ほんとに悪いことじゃないなら,直ぐにくれるだろうね」



茉俐様は,ふわりと弱く微笑んだ。



「茉俐様」

「なに?」


茉俐様は
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