澄ましたメイドのご主人様。
「茉俐様,少し外しますね」
茉俐様の幼馴染みで,出入りの多い方となると……
お会いして良いものかと思ってしまうが。
多分,いいんだろうなぁと私は茉俐様に声をかけた。
「ちょっとまって」
茉俐様も誰の判断であるか分かってるはずなのに,何故か私の手首を掴む。
「何て書いて送ったか,思い返してたんだけど。花蓮1人で行かせるのは,やだ」
「やだって……」
言われましても。
何て書いたんですか。
そう開く口を閉じて,私はそっと茉俐様の手を外した。
「直ぐに戻ってきますよ」
「……そうして」
私はドアを開け,外で待たされ続けていた住み込みの方に軽く頭を下げる。
「お待たせしました。少し急ぎます」
「はい,それがいいですね」
ふわりと笑ったお偉いさん慣れしてそうなその方は,とても優しそうに見えた。
茉俐様の幼馴染みと言う方はどんな方なんだろう。
茉俐様には縁遠そうだと,別の方向に頭を飛ばしていた私は,そう再度考えた。