澄ましたメイドのご主人様。
そんなに,大事そうに見ないで欲しい。

当たり前に,手を取らないで欲しい。

欲しいが多すぎて,勘違いしてしまいそうになる。



「茉俐様……私って,茉俐様のなんなんでしょうか」



部屋について問うと,茉俐様はとろんと目を垂らした。



「……っ」



大事なメイドさんと言ってくれたらいいのに,さっきみたいなのでも百歩譲って満足なのに。



「大事な女の子って言ったら……どうする?」



ずるい。

聞いているのは私なのに,はっきり言うことなく,更には私にどんな答えなら言いと問いかけてくる。



「ど……どぅゅう意味なのか,お聞き,します」



動揺したら,思う壺だ。

それは,目の前の嬉しそうな茉俐様が証明している。

だけどあまりに突然で……



「うん,じゃあ俺は,誰にも渡したくない感情で花蓮が好きなんだって言う」

「なんですか,それ。そもそも,茉俐様って良いとこの女の人じゃなくてもいいんですか」

「うん,いいんだよ。俺は俺がちゃんとしてれば好きにしていいって,もう俺が花蓮の話をした時から言われてるから」



こうゆうの,密約って言うんだろうか。

別に私の身柄を勝手にやり取りされたわけじゃ,断じてないけど。

胸のあたりがこう,むずむずする。



「だから,ほら。つまりね? 花蓮,俺は花蓮のことが好きだよ。これからも,俺だけが大事にしたいと思ってる……花蓮は? 花蓮は俺のこと,どう思ってる? 少しも特別なんかじゃない?」

「だ……いじだって答えたら,私は何になるんですか?」

「彼女,恋人,フィアンセ。名前なんてどれでもいいよ」



名前をつけること自体は,本当にいいんですね。

茉俐様。

私は
< 54 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop