澄ましたメイドのご主人様。
……広い。

慣れない私には,酔ってしまいな程。

広さをこれでもかと活用し,物を置くでもなく。

落ち着いたその空間はキラキラと広さと清潔さを保たれていた。



「初めまして花蓮様。私《わたくし》,日々のスケジュール管理やここで働くものの総監督を任されております,長野晴臣《ながの はるおみ》と申します」



機械越しに聞いていた声が,私にかかる。

目の前には,黒と白の綺麗に混ざった髪の毛をぴっしり固めた,優しそうなおじさまがいた。

しつこく自己紹介をするわけにもいかないので,私は



「初めまして」



と,小さく頭を下げる。

そんな私に長野さんは畏まらずにと言ってくれて,私はその頭を上げた。



「旦那様はこちらです」



旦那,さま……?



「ちょっと待ってください。面接は旦那様自ら行うのですか?」



今,自宅にいたと言うことはつまり,数少ない休暇と言うことではないだろうか。

それを,事前確認もなく押し入ってきてしまったら,印象も悪い。

思わず引き留めた私に,長野さんは悪い顔をせず,にこりと答えてくれる。


「普段はそもそも面接などという制度はありません。必要分の人材だけ願い出の電話をいれ,最適な人物を送って貰うことになっています。ただ,花蓮様は私達とは少し業務が異なりますので,是非旦那様自らお話しがしたいとの事です」

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