澄ましたメイドのご主人様。
いよいよ心配になってくる。
息子とやらのご子息は,一体どれだけの問題児なのやら。
それともそんなのは表向きで,危ないことに付き合わされそうになったらどうしようか。
万が一の時は断るつもりではあるが,どうにも出来ないなと,私はため息を飲み込んだ。
心休まらない,綺麗と言うのがぴったりの豪邸。
働かせてくださいと頭を下げる立場で悪くいうつもりは無いが,ここよりは小さな我が家に住みたいと思ってしまった。
広く,眩しく,鮮やかで綺麗な豪邸で,落ち着いて過ごすことなどとても出来そうにない。
長野さんについて歩くだけのその足音さえ気になってしまう……静寂。
「こちらです。では,ここからはお一人で。ノックのみで,後はそう固くならずとも大丈夫です」
「ありがとうございます」
私に一礼し,言葉通りすたすたと長野さんは去る。
ーコンコン
迷いなく,私はその戸を叩いた。