麗矢様のナイショの溺愛
*
「麗矢先輩、これ、もらってください」
どうなってんのかわかんない、おしゃれな髪型の毛先が揺れ、ほんのりと甘い匂いがする。
まるで花に吸い寄せられるかのように、差し出されたクッキーに手が伸びる。
手元が軽くなると、彼女は顔を上げて、口角を上げた。
「ありがとう」
俺にクッキーを渡すことが目的だったようで、彼女は少しだけ頬を赤らめると、そのまま去っていった。
「相変わらず、モテるのな」
少し離れた場所から見ていた流星が憎しみの籠った目で、さっきのクッキーを見ている。
「今週何回目だよ」
「さあ?」
女子からのプレゼントなんて、いちいち数えていられるか。
「麗矢、今日もイケてるね」
「ありがとう。スズも最高に可愛いよ」
別れの挨拶のように、気軽に交わされる言葉たち。
気持ちが籠っていないのは、俺が一番わかっている。
「お前……いつか嫉妬で殺されそうだな」
「なんだよ、それ」
流星に返しながら、ふと、ある考えが過ぎった。
「響、これ見たら嫉妬してくれるかな」
「……くだらね」
流星の呆れた声なんてどうでもよくて、俺は家まで急いだ。
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