いつか永遠の眠りにつく日まで
「疲れたわ…。」



ダンスホールを抜け出してバルコニーに出ると、夜風が気持ち良くてついつい言葉が漏れてしまった。

正直もう中には戻りたくない。


溜め息を吐いたその時、コツコツと靴音がした。

何気なく振り返ると、そこには階段の踊り場ですれ違った彼がいた。


またドキリと心臓が跳ねた。


(あ…。)


向こうも私に気付いたようで、こちらに歩み寄って来る。



「お前がリーリアだったとはな。」



低く、けれど品のあるその声に私はまたドキッとした。



「お初にお目にかかります。あなたは…?」

「……デネブリスの国の者だ。名はレオ。」

「レオ…様…。」



ゆっくりと、その名を口にしてみる。

喉の奥がキュウッとなって、なんだか少し痛いような気がする。



「先程は挨拶もまともにせずすまなかった。」

「いえ、今こうしてお話して下さるだけで充分です。」



ふと、目が合う。

漆黒の髪に、漆黒の瞳。その瞳の奥には、何か力強いものを感じる。


(やはり、なんて美しい…。)

つい見入ってしまいそうになるのをグッと堪えた。



「この国は良い国だ。温暖な気候に、恵まれた土。おまけに国民も皆穏やかだ。」

「ありがとうございます。」



褒められるとつい自分のことのように照れてしまう。
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