いつか永遠の眠りにつく日まで
「私は今晩、ここを発つ。」



突然の言葉に、俯いていた顔を上げて隣に座るレオ様を見上げた。

来賓の方々は明朝に発たれる方が多いが、今晩発たれる方ももちろんいる。



「そうなのですね…。」



ということは、もう一緒にいることは叶わないということか。

月明かりに照らされたレオ様の横顔が、また美しくて。


不意にこちらを向いたレオ様と目が合う。まるで、この世界に2人しかいないかのような不思議な感覚に襲われる。

だから、背後から近づく影に気が付かなかった。



「レオ様。」



突然、背後から低い声が響いた。

お腹の底がぐっと冷えてしまいそうなほど、冷たくて感情のない声だった。



「馬車の用意が整いましたが…、どうされるおつもりですか。」

「……書状は。」

「ご命令通り、レオ様が使用していたお部屋に。」

「……そうか。」



訳が分からないまま、私はそっと後ろを振り返った。

そこにいたのは、銀縁眼鏡をかけデネブリスの服をまとった男性だった。感じからして、レオ様のお付きの人だろうか。



「……あまり、猶予はありませんよ。」

「分かっている。」
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