だって、しょうがない
「翔くん……」

 突然の告白に愛理は戸惑い、視線を彷徨わせた。それを見た翔は愁いを帯びた瞳で微笑み、優しい声で語りかける。

「返事はしなくていいよ。ただ、ひとりで頑張らなくていいって伝えたかっただけだから」

「でも……」

 と言いかけた愛理の唇を、翔は差し伸べた指先でふさぐ。
 見開いた愛理の瞳に、悲し気な翔が映っていた。
 温かな指先が愛理の唇をなぞるように滑り、翔がそっと囁く。

「この写真の男とは、もう会わないんだろ?」

 そう言って、愛理の唇から翔の指先が離れていく。愛理は自分の手元へ視線を落とし、その手を握り込む。そして、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

「……もう会わない。連絡先も知らないし、東京と福岡だから……ね」

「じゃあ、この写真のことは誰にも言わない。オレと愛理さんの秘密にしよう」

 その言葉に愛理は驚き顔を上げた。真っすぐに見つめる翔の瞳と視線が合い言葉がでない。

「……」

 真剣な瞳に囚われたように愛理は動けずにいた。
 すると、翔の声が聞こえた。

「だから、オレと共犯者になってよ」



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