だって、しょうがない
「あ、誤解のないように言っておくけど、オレはその間、実家に行ってるからね。ひとりで寂しいかもしれないけど、まめにLIMEするから、ホテルにひとりで泊まろうとか考えないように」

 好きと告白された後に翔の家で暮らすようにと言われ、てっきり、一緒に暮らし、関係を迫られているのかと愛理は考えてしまったのだ。
 でも、そんな思惑はなく、自分を安全な場所へ置いておくための提案だった。

「ごめんね。一瞬疑っちゃった……。淳と友達に裏切られて、人間不信になっているのかも……」

「オレに脅されると思った? あー、そんな風に思われていたなんて、こんなに紳士なのに、ショックで泣きそう」

 大げさにハンドルに伏せ、翔は泣き真似をする。わざと(おど)けているのだと、わかっていても傷つけてしまったのでは?と、愛理は、慌てふためいてしまう。

「ごめん。翔くんがそんな人じゃないって、わかってるのに、ごめんね」

 翔はそんな愛理を見てクスリと笑い、愛理へ視線を合わせた。

「大丈夫だよ。だからもっと信用して」

「ありがとう。早めに引っ越し先探すから……。それまで、お言葉に甘えて、お世話になります」

 と愛理はぺこりと頭を下げた。その様子に翔は優しく微笑む。

「部屋探しも手伝うし、ゆっくりでいいから、ムリをしないこと」

「翔くん……ありがとう」



 
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