だって、しょうがない
 由香里は、ワイングラスを揺らしながら、独り言のように話し始める。

「わたしは、結婚って制度はムダだと思っているの。だって、結婚すると、女は不利になる事って多いじゃない?」

 確かにそうだと愛理は思った。特に淳のような家事は女がやって当然の昭和的な考えは、共働き夫婦には妻の負担が大き過ぎる。

「フランス式に同棲と結婚の間ぐらいがちょうど良いんだけどなぁ。結婚しなければ、家と家の繋がりとかで、親に煩わされる事もないんだから」

 愛理の言葉に頷いて、由香里はワインを口にした。そして、残りのワインをグラスの中でゆっくりと回しながら話を続ける。

「本当にそうだよね。パートナーでちょうどいいかも。その方が対等な関係でいられる気がする。結婚すると苗字が一緒になるでしょう。相手の姓に入るとか嫁入りに直結して属物になる感じがイヤだわ」

「結婚したら幸せになれると思っていたのにね。おとぎ話でも王子様と結ばれて、めでたしめでたしで終わりでしょう。その先に不幸な続きがあるなんて、夢にも思わなかった」

 テーブルの上にあるグラスに、手を添えている愛理を慰めるように、由香里の手が重なる。そして、長いまつ毛に縁どられた瞳が愛理を捉えた。

「別れられない事情があるなら、外にパートナーを求めてみたら? 不倫って、1回でもSEXをしたらそこに気持ちがなくても不倫なんだって。でもね、証拠が無ければ不倫の認定は受けないんだよ」

「えっ⁉」
 愛理は由香里の言っている言葉の意味がわからず、目を見開く。すると、蠱惑的に由香里が微笑んだ。

「不倫は良くない事だけど、刑事罰があるわけじゃないし、前科が付くわけじゃないの。最悪、民事で揉めるだけなんだよね。でも、淳クンが先に裏切ったんだから、愛理も外に求めてもいいんじゃない? バレ無ければ平気だし、バレても淳クンだって遊んでいるんだからお互い様よね」
< 14 / 221 >

この作品をシェア

pagetop