だって、しょうがない
「本当に良かった。翔くんが倒れているの見つけたとき、何が遭ったのかわからなくて、もしかしてって、悪い考えばかり浮かんでしまって……」

 そんな愛理の髪をなだめるように翔の手が優しく撫でる。

「ごめん、まさか、兄キが……」と言い切かけたところで、翔はハッとして、愛理を膝の上に置いたまま、椅子の上に起き上がり、愛理の頬や肩に手を這わせ、ケガをしていないか確認した。

「愛理さんは、大丈夫? ケガしていない?」
 
 無我夢中で翔に抱き着いたり、今だって翔の膝の上に座っていたことに気づいた愛理は、急に恥ずかしくなって、開けっ放しだったドアの外に跳ね除いた。
「ご、ごめん。私は、大丈夫。それより翔くんのケガの方が心配だよ。何があったの?」

「車に乗り込んだところで、兄キに声をかけられたと思ったら、いきなりバチッて電気が走って……。普通スタンガンじゃ、気絶するほどじゃないって聞いたことがあるんだけど、情けないな」
 
 スタンガンなんて、TVドラマみたいな出来事に愛理は驚きの色を隠せない。そして、さっき淳の手に握られていたのは……。と思い当たり、自分にも使われる可能性が遭ったかと思うとゾワリと悪寒走る。

「どこに当てられたの。ケガしてない?」

「首のところ、少しヒリヒリするぐらいだから大丈夫だよ」

 マンションの駐車場へ、赤灯を回した警察車両が入ってきた。

「さっき淳に会ったとき、助けてくれた人が、警察を呼んだと言っていたから、通報で来てくれたんだと思う」

「オレも一緒に行くよ」

 

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