だって、しょうがない
「愛理さん……」
さっきまで、ゆっくりと部屋を探すと言っていた愛理の突然の申し出。翔は驚きを隠せず、言葉を失った。
「大丈夫、変なところには泊まらないから、レディースフロアがあるホテルを見つけたんだ。前から色々調べていたの。ここからタクシーを使えば直ぐのところで、危なくないよ」
淳と愛理の仲がこじれる前は、つかず離れずの普通に付き合いのある兄弟だった淳と翔。それが、今では危害を加える不安まで出てきてしまった。自分さえ、差し出された手の居心地の良さに、甘えていなければこんなことにはならなかったと、愛理は後悔をしていた。
「翔くんは、お部屋でゆっくり休んで、お風呂も沸いてるから、大丈夫だったら入ってね」
「オレは、平気だから実家に帰るよ。愛理さんはここに居て」
翔ならそう言ってくれるのはわかっていた。けれど、これ以上甘えてはいけない。愛理はテーブルの下でギュッと手を握りしめる。
「ありがとう。でも、淳もここに来たから……ホテルに行くね。今まで、翔くんが手助けしてくれから心強かった」
真っ直ぐに向けられる愛理の視線に翔の胸は切なく痛む。
やっと、愛理が気を許し始めていたはずだった。それなのに、一線を引いたような愛理の様子に、近くなったふたりの距離が、また遠くなってしまったのを感じた。
さっきまで、ゆっくりと部屋を探すと言っていた愛理の突然の申し出。翔は驚きを隠せず、言葉を失った。
「大丈夫、変なところには泊まらないから、レディースフロアがあるホテルを見つけたんだ。前から色々調べていたの。ここからタクシーを使えば直ぐのところで、危なくないよ」
淳と愛理の仲がこじれる前は、つかず離れずの普通に付き合いのある兄弟だった淳と翔。それが、今では危害を加える不安まで出てきてしまった。自分さえ、差し出された手の居心地の良さに、甘えていなければこんなことにはならなかったと、愛理は後悔をしていた。
「翔くんは、お部屋でゆっくり休んで、お風呂も沸いてるから、大丈夫だったら入ってね」
「オレは、平気だから実家に帰るよ。愛理さんはここに居て」
翔ならそう言ってくれるのはわかっていた。けれど、これ以上甘えてはいけない。愛理はテーブルの下でギュッと手を握りしめる。
「ありがとう。でも、淳もここに来たから……ホテルに行くね。今まで、翔くんが手助けしてくれから心強かった」
真っ直ぐに向けられる愛理の視線に翔の胸は切なく痛む。
やっと、愛理が気を許し始めていたはずだった。それなのに、一線を引いたような愛理の様子に、近くなったふたりの距離が、また遠くなってしまったのを感じた。