だって、しょうがない
「淳は、相手と別れたんだから、それでいいのかと思っているのかも……」
愛理は、そう思いあたった。
「そうか、それなのに思い通りにならなくて自棄になっているようにも見える。余計に気を付けないと」
「でも、警察へのストーカー被害届けのことなんだけど、この先、跡取りで役職のある淳が摘発されるようなことになったら、『不動産リフォーム樹』の信用が大きく揺らぐことになると思う。会社に携わるたくさんの人の生活がかかっているのに、個人的な問題で迷惑をかけたくないの。だから、今回のことがあるから警察には相談はするけど、届けを出すのはもう少し様子を見てからにする」
「愛理さん……。会社より自分の身を守ることを考えて」
「でも、お義父さんにも悪いし、会社の業績が落ちたときに、最初に整理されるのは下請けさんなんだよ」
愛理は、中村家、蜂谷家、両方を気に掛けているんだと翔は気づいた。愛理の実家の両親とは、上手くいっていないはずなのに、こんな状況でも思いやれる愛理の愛情深さに驚かされる。そして、淳が愛理に執着するのも理解できるような気がした。
「兄キもバカなことばっかりやっていないで、目を覚ましてくれるといいのにな」
「そうね。これ以上思い出を汚すようなことをして欲しくないな。嫌いになるために結婚したわけじゃないのに……」
そう言って、うつむく愛理の小さな肩を翔は抱きしめたくなる。けれど、代わりに、そっと髪を撫でた。
「愛理さん、いまは辛いけど、少しずつ進んでいるから、良い兆しが見えるようになるはずだよ」
「うん、ありがとう。長くなっちゃってごめんね。ひとりでどうにかしようなんて考えていないよ。でも、今日はホテルに泊まるね。翔くんはこの部屋で体を休めて、お願い」
結局、愛理は翔の体を心配して、ホテルへ行く意思を曲げようとしない。
翔は、細く息を吐いた。
「じゃあ、この後の避難場所考えておくよ。それにホテルまで送るから」
「翔くんが休んでくれないと、私が安心できないの。タクシーも下まで呼ぶし、ホテルの場所もURLも送る。私もちゃんと考えてるから大丈夫だよ」
「仕方ないな。でも、タクシーに乗るのを見送るのは、譲れないからね」
愛理は、そう思いあたった。
「そうか、それなのに思い通りにならなくて自棄になっているようにも見える。余計に気を付けないと」
「でも、警察へのストーカー被害届けのことなんだけど、この先、跡取りで役職のある淳が摘発されるようなことになったら、『不動産リフォーム樹』の信用が大きく揺らぐことになると思う。会社に携わるたくさんの人の生活がかかっているのに、個人的な問題で迷惑をかけたくないの。だから、今回のことがあるから警察には相談はするけど、届けを出すのはもう少し様子を見てからにする」
「愛理さん……。会社より自分の身を守ることを考えて」
「でも、お義父さんにも悪いし、会社の業績が落ちたときに、最初に整理されるのは下請けさんなんだよ」
愛理は、中村家、蜂谷家、両方を気に掛けているんだと翔は気づいた。愛理の実家の両親とは、上手くいっていないはずなのに、こんな状況でも思いやれる愛理の愛情深さに驚かされる。そして、淳が愛理に執着するのも理解できるような気がした。
「兄キもバカなことばっかりやっていないで、目を覚ましてくれるといいのにな」
「そうね。これ以上思い出を汚すようなことをして欲しくないな。嫌いになるために結婚したわけじゃないのに……」
そう言って、うつむく愛理の小さな肩を翔は抱きしめたくなる。けれど、代わりに、そっと髪を撫でた。
「愛理さん、いまは辛いけど、少しずつ進んでいるから、良い兆しが見えるようになるはずだよ」
「うん、ありがとう。長くなっちゃってごめんね。ひとりでどうにかしようなんて考えていないよ。でも、今日はホテルに泊まるね。翔くんはこの部屋で体を休めて、お願い」
結局、愛理は翔の体を心配して、ホテルへ行く意思を曲げようとしない。
翔は、細く息を吐いた。
「じゃあ、この後の避難場所考えておくよ。それにホテルまで送るから」
「翔くんが休んでくれないと、私が安心できないの。タクシーも下まで呼ぶし、ホテルの場所もURLも送る。私もちゃんと考えてるから大丈夫だよ」
「仕方ないな。でも、タクシーに乗るのを見送るのは、譲れないからね」