だって、しょうがない
改めて話しがあると言われ、ダイニングテーブルの席に着いた愛理は、緊張して口を引き結ぶ。そして、お義母さんの相談事は予想を裏切らない内容だった。
 
「あの……。愛理さんは淳と離婚したいと思っているよね」

 愛理は、静かにうなずいた。

「それで、お願いと言うのは、愛理さんの弁護士さんと連絡を取らせてもらいたいの。日程を調整して、淳を交えて、お話しをさせてもらえたらと思って……。勝手を言って悪いけれど、できれば……話し合いの場所は、この家でもいいかしら?」

早々に弁護士を交えて、話し合いの場を設けてもらえるのは、有難い申し出だ。
 でも、淳の両親とも一緒というのは、場合よっては、アウエーな状態になって、話しがこじれるかもしれない、と覚悟をした。

「よろしくお願いします」

 愛理は深く頭を下げた。

「ありがとう。愛理さん」

 ホッと息をついたタイミングで、翔が入って来た。
 口元に手をあて、ふゎぁっと、まだ眠そうに大きなあくびをしている。

「おはよう、ふたりとも早いね。愛理さん、具合はどう?」

「心配かけてごめんね。熱も下がって、だいぶ楽になったの」

「今日は、病院へ消毒に行かないと、オレも有給を取ったから一緒に行くよ。昨日、置いてきた車を取りに行きたいし……」

と翔は、頭の中で今日の予定を組んでいた。そして思いつたようにパッと目を見開く。

「愛理さん、マンションに置いてある残りの荷物運び出せるよ」






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