だって、しょうがない
「あと、持って行くものある?」

 見守りカメラも無事に回収した。そして、荷物に取り掛かる。
 バッグや靴など、いざクローゼットから出してみると意外なほどかさばった。荷物の多さにうんざりし始めていたとき、隅に置かれたアルバムを見つけた。
 実家から持ってきた物まである。荷物になるからと言って、それをここに置いておくわけにもいかない。
 
「ごめん。翔くん、これも持って行っていい?」

「なに? もしかして、愛理さんのアルバム⁉ 見ていい?」

 返事をする間もなく、翔は好奇心旺盛な瞳でアルバムをめくった。それを見て愛理は慌てふためく。

「だめっ⁉ 恥ずかしいから見ないで」

 アルバムなんて、ご多分に漏れず黒歴史の集約だ。そんなものをとてもじゃないけど、見せられない。
 愛理は、取り返そうと右手をのばすも、180センチを超える高身長の翔が、それを高く掲げページをめくった。

「わー、愛理さんのJK時代、可愛いい」

「ちょ、ちょっと、だめだって言ってる!!」

 取り返そう必死な愛理の手の届かないさらに高みへ、翔はアルバムを持ち上げる。
 
「この写真も可愛い、文化祭かな?」

「もう!」

 愛理は、右手を思いっきり伸ばし、意地になって、つま先立ちでどうにかアルバムを取り戻そうと、ぴょんぴょんと跳ねた。
 そのムリな姿勢がたたり、ぐらりと重心がゆらぐ。

「きゃっ!」

 ギュッと目を瞑り、次に来るはずの床に激突する痛みを覚悟する。
 けれど、痛みなど感じるはずもなく、翔の大きな手に背中を支えられ、胸に抱き留められていた。



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