だって、しょうがない
 翔は横にいる愛理の様子を窺うと、血の気を失った青い顔をして口を引き結び、画面を見つめていた。映像を一時停止をして話しかける。

「愛理さん。もう止める?」

「ううん、大丈夫……。後、少しだと思うから最後まで見なくちゃ」

 愛理は、自分に言い聞かせるように強くうなづく。

「じゃ続けるよ」

 と、翔は続きの映像を再生した。
 パソコンの画面の中では、淳が美穂へ問いかけている。

『じゃ、俺のこと、どう思っていたんだ?』

『うーん、絶妙なスリルは楽しかったわ。それだけかな? これからの暮らしを引き換えにしてまで、関係を続けていこうとは思えないの。ごめんなさいね』

 その言葉を聞いて、不快な気持ちを隠そうとしない淳は顔を歪めた。

『なんだよ。ずいぶん評価が低いな』

『ふふっ、あなたには、良くも悪くもマジメな愛理がお似合いよ。この部屋だって綺麗にしてくれているんでしょう。センス良く整えられているもの』

『ああ、妻としては、マジメでいいけれど、お前とスルときみたいに(たの)しめないんだよ』

あのコ(愛理)とのSEXが(たの)しめないとか言っていないで、好きなように仕込んであげたら?』

『はっ、余計なお世話だよ』

『妻は清く正しくがいいのね。でもあのコ、M気がありそうじゃない? 調教しちゃえば?』

 そう言って、美穂はフフフと笑う。
 それにつられたように淳も口角をあげた。




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