だって、しょうがない
 美穂へ真っ直ぐに視線を向けた愛理は、言い聞かせるようにゆっくりと話しを始める。

「偶然見つけちゃって、アカウント” A ”って美穂でしょ? ご自慢のバッグとかもUPされていたし、デートに行ったレストランもUPしてたね」

「だから何の話なの?」

 と美穂は緊張を隠しきれずに眉根を寄せる。

インストのアカウント”A”には、淳とデートをしたときに撮影した写真が、それとなくUPされていた。
愛理は、インストのアカウントを知っていると告げたことで ”淳との不倫に気づいているんだ” 警告をしたのだが、美穂が素直に認めるはずもなかった。

 ふぅ、っと息を吐き出した愛理は穏やかに微笑んだ。

「ごめん、私の勘違いだったかな? そうだよね。間違えたみたい。ごめんね」

「……いいのよ」
 美穂は、愛理の追求から逃れられたとほくそ笑む。
インストの裏アカウントには、デートで行ったお店やプレゼントでもらった物など、いわば自慢ネタしかなかったはずだ。証拠になるモノなんて、せいぜい手の先ぐらいしか写っていない。それだけなら、例えバレても、お人好しの愛理なんて簡単に言いくるめると美穂は思った。

 愛理と美穂の間の微妙な雰囲気を由香里が取りなすように声をかける。

「あっ、そうだ。愛理ってば、美穂にプレゼント持ってきたって言っていたでしょ? 今、渡しちゃえば」

 愛理は、その言葉にうなずき、光沢のある紙袋を美穂へ差し出した。

「そうだね。これ、婚約祝いに《《思い出のアルバム》》を作ってきたの。大切な思い出だから、《《けして忘れないで》》」




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