だって、しょうがない
「大学時代には、淳クンの事なんて興味なかったクセに、今になってそんな事を言うんだ」

 佐久良に向かって、由香里が笑いながら軽口をたたく。それにピクリと佐久良の眉が反応したのを愛理は見逃さなかった。

「だって、そんな有望株とは思っていなかったし、あの頃に比べたら淳クン、あか抜けたよね」

 その言葉に愛理は、矛盾を感じた。淳クン元気?と聞いて来たクセに、あの頃に比べたらあか抜けただなんて、最近会っていないような事を言って、実は会っていたのではないだろうか?

「あか抜けたのは、奥さんである愛理が頑張ったからだよ。ねー、愛理そうでしょう」

「う、うん」

 由香里のフォローに上手く反応できない。佐久良の挑戦的な言葉が頭の中でグルグルと渦巻く。


 もしかしたら、不倫相手は佐久良麻美なのかもしれない。
 最近淳と会っていたのか、淳の不倫相手なのか、問い質したくなる。
でも、そんな事をすれば、自分の結婚生活が上手くいっていないのを露呈してしまう結果になる。佐久良が淳の不倫相手でも、不倫相手でなくても他人の不幸は蜜の味とばかりに食いついてくるだろう。
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