だって、しょうがない
愛理は目一杯、虚勢をはる。
「主人を高く評価してもらえて、妻としては喜ぶべきかな? でも、淳は服一枚自分で片付けられなくて、ホント手が掛かるの。食事も出来合いのお惣菜とか嫌がるから、お姑さんにおふくろの味を教わって、手作りして頑張っているの。御曹司とか言って持ち上げてもらったけど、お手伝いさんが雇えるような暮らし向きじゃないから奥さんやるのも意外と大変なのよ」
「そ、そうなんだ……。あっ、美穂のところは、もしかしてお手伝いさんがいる家だったりする?」
愛理の話が、佐久良の想像していた結婚生活と違っていたのだろう。一瞬、驚いたように目を見開いた佐久良は勢いを失くし、話しを逸らした。
「あ、ウチの話になった。あはは、お手伝いさんなんて居ないよ。新居になるマンションのサービスにハウスキーパーはあるみたいだけど……」
クスクス笑いをする美穂に由香里が問いかける。
「新居のマンション、コンシェルジュがいるタワーマンションなんだ」
「まあ、田丸さんが用意してくれたから……」
そう言って、美穂は、したり顔をみせる。
「いいな~、うらやましい」
みんながワイワイと話をしている間も愛理の気持ちは落ち着かない。淳の浮気相手は佐久良なのかも⁉という思いが頭の中を占めていた。