だって、しょうがない
”A”のインストに写っていたスマホと同じ緑のtuyokuの画面を見ながら、食事をしていた淳が、驚いたように顔を跳ねあげた。

「福岡に出張だなんて、今まで無かっただろ?」

「うん、前に担当したお客様のお嬢さんが、結婚して福岡に新居を構えるんだって、それで、私を指名してくれたの」

「へえ、今までの実績が買われたんだ。良かったな。それで、いつ行くんだ?」

「来週の木曜日に、会社が終わったらそのまま、羽田から飛行に乗る予定。それで、金、土で仕事して、終わらなかったらそのまま日曜日も仕事なるかも……」

と、言って愛理は淳の様子をチラリと窺う。
 一瞬、目が合うと淳は何かを考えるように視線を漂わせ、独り言のようにつぶやく。

「結構、長いんだな」

そして、思い出したように愛理へと顔を向ける。

「一日ぐらい実家に寄って、メシでもご馳走になって来るよ」

「いいんじゃない? 私もせっかく福岡まで行くんだから仕事が早く終わったら観光でもして来ようかな?」

「食べ物も旨そうだし、ゆっくりして来いよ」

「じゃあ、月曜日が祭日だから、月曜日に帰ってくるね。どこに観光行こうかな」

「ああ、楽しんでおいで。俺、風呂に入るから……。ごちそうさん」

「ん、おそまつさまでした」

と、スマホを持ったままリビングから出て行く淳の後ろ姿を見つめていた愛理は、ドアが閉まるとふぅーっと息を吐きだした。

──スマホをお風呂に持ち込んで、きっと、不倫相手に連絡を入れるんだよね。


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