だって、しょうがない
──淳が私を裏切っていた。

 それは、ここ数か月、持ち続けていた疑念が、確信へと変わった。
 仕事が忙しいと言って遅く帰ることが多く、スマホは肌身離さず持っている。新しいネクタイをしてみたり、身だしなみを気にするようになったり、キーケースも新しいものに変えていた。

 雑誌やネットで見る”浮気の兆候”というのに当てはまっている。
 それでも『淳に限って』と信じたい気持ちで、目を逸らしていた。

 結婚して2年、交際した期間も含めれば、7年も一緒に居る。
 大学のサークルで知り会った時は、人当たりも良く人気者の彼にだんだんと惹かれていた。ある日、淳からの告白で付き合うようになった時は、本当に夢を見ているようで、幸せだった。
 
 お互いが背伸びせずに、一緒にいる空間が心地よく、この先、家庭を築くなら淳だと思っていた。

 永遠の愛を誓い、年を重ね死が二人を分かつまで、ずっと一緒にいるものだと信じていたのに……。
 それが、幻だったなんて……。

 でもこのLIMEの履歴だけじゃ、不倫の証拠としては弱い。どうにか、尻尾を掴み、出来れば、相手も見つけ出して慰謝料を請求してやりたい。

 今まで、二人で積み重ねて来た7年もの月日が、全て汚れてしまったように感じる。

 悔しい。
 絶対に許さない。

 スマホを持つ手に無意識に力が入り、LIMEの履歴を映した写真を睨みつけ決意を固める。

 不倫の決定的な証拠を掴むために、淳の様子を見るしかない。
 悔しいけど、表面上は今まで通りに振舞って、淳が不倫をしている事に気が付いていないフリをする。
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