だって、しょうがない
 タブレットの画面の中では、ラタンのソファーに座り、美穂の愛撫を受けて恍惚の表情を浮かべている夫がいた。
 ピチャピチャと淫猥な水音が、タブレットのスピーカーから漏れて来る。

『なあ、そろそろ……いいだろ』
『ふふっ、ここでスルの? 上になってあげるから、支えてよね』

 明るい部屋の中で、獣のように縺れ合う夫と友人の姿が、タブレットの画面に映っている。

『ああぁ……いい……』

 愛理は虚ろな目をして、友人の喘ぎ声を垂れ流すタブレットをパタンとテーブルの上に伏せた。そして、ルームウエアからAラインのワンピースに着替えると、バッグの中にスマホとお財布をねじ込み、ルームキーをホルダーから引き抜く。

『ねえ、気持ちいい?』
『ん……気持ちいいよ』

『愛理よりも?』
『ああ……最高だよ』

 伏せられたタブレットは、声を伝え続けている。
 表情を失くした愛理は、部屋のドアを閉め歩き出した。

 

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