だって、しょうがない
 ”これは特別な出会いです”
 北川の言葉が、愛理の心にスッと沁み込んだ。

「ありがとうございます。私……。このサイト使うの初めてで、少し怖かったんです。でも、北川さんがいらしてホッとしました」

「良かった。掲示板で言っていた目印のGleamを持っているのが、あいさんだとわかった瞬間。心の中でガッツポーズしましたよ」

 そう言って、照れたように笑う北川のお店では見せなかった柔らかい表情に釣られ、愛理も顔をほころばせた。

「もう、お上手なんだから! あ、今日お誕生日なんですよね。おめでとうございます。なにかご馳走させてください」

「31歳にもなった、いい大人が、誕生日でもないんですけど、そんな日に独りでいるのは寂しくて……。だから、一緒に居てくれるだけで十分です。あいさん何が食べたいですか?」

「私、この辺りに全然詳しくなくって、北川さんのオススメのお店でいいです」

「そうだった、あいさん東京から来たんですよね。じゃあ、お店は僕のオススメで。それと、今から僕のことはKENと呼んでくださいね」

 と、言った北川が”できるかな?”とでも言うように愛理の顔を覗き込む。
 その悪戯な視線に頬を熱くしながら、愛理は口を開く。

「あ、ごめんなさい。そうですよね……。じゃ、KENさんとお呼びします。あの、私の方が年下ですし、良かったら敬語は無しで……」

「じゃ、お互い敬語は無しで。美味しい物を食べに行こう」

 北川が差し出した大きな手に愛理は手を重ねた。



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