だって、しょうがない
「博多のもつ鍋のモツは、火が通ったらサッと上げて食べるんだよ」
北川のオススメの店、地元のもつ鍋屋さんに案内され、今はテーブルを挟んで向かい合わせに座っている。
誕生日だというのにもつ鍋屋さんをチョイスしたのは、愛理が東京から来たことを知っている北川の気遣いなのだと、嬉しく思った。
ボトルで頼んだ焼酎を大きな氷が入ったグラスに注ぐ。北川はロックで、愛理は薄めの烏龍茶割で乾杯をする。
「お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。祝ってもらえるのはやっぱり嬉しいね」
北川は、店員さんから運ばれてきたお皿を受け取ったり、それを取り分けたり、かいがいしく動いてくれる。今まで世話をするばかりで、された事のない愛理はむずがゆいような、嬉しいような気持で好意を受け取った。
クタクタに野菜が煮えるまで待って、モツを鍋に入れる。中に沈まないようにかき混ぜないのがコツだと言う、北川の鍋奉行ぶりを愛理は十分に楽しんでいた。「そろそろ食べごろだよ」と声が掛かる。
モツがぷるっと膨らんだタイミングで、鍋から掬い上げ、湯気の立つモツをハフハフと口に入れる。噛み込むと弾力があり、旨みの強い脂が口いっぱいに広がった。
「うーん。美味しい。臭みも全く無いし、東京で食べるモツ鍋と全然違う」
愛理が歓喜の声を上げると、北川が嬉しそうに微笑み、解説を始める。
「博多のモツは、生の牛を使うんだ。茹でモツは旨味が落ちてしまうから」
「なるほど、素材から違うんだ、だからこんなに美味しいのね。お酒も進むー。あ、KENさんも食べて、食べて」
さっきから、接待よろしくお世話ばかりして北川の箸が進んでいないように見える。愛理は、ボトルの焼酎を北川のグラスにつぎ足した。
「心配しないで、ちゃんと食べているから、それより僕の事、鬱陶しくない?」
「え?」
「わりと世話好きで、尽くしたいタイプなんだよね。だから、人によっては鬱陶しく感じるのかも……」
そう言って、北川は視線を落とした。
北川のオススメの店、地元のもつ鍋屋さんに案内され、今はテーブルを挟んで向かい合わせに座っている。
誕生日だというのにもつ鍋屋さんをチョイスしたのは、愛理が東京から来たことを知っている北川の気遣いなのだと、嬉しく思った。
ボトルで頼んだ焼酎を大きな氷が入ったグラスに注ぐ。北川はロックで、愛理は薄めの烏龍茶割で乾杯をする。
「お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。祝ってもらえるのはやっぱり嬉しいね」
北川は、店員さんから運ばれてきたお皿を受け取ったり、それを取り分けたり、かいがいしく動いてくれる。今まで世話をするばかりで、された事のない愛理はむずがゆいような、嬉しいような気持で好意を受け取った。
クタクタに野菜が煮えるまで待って、モツを鍋に入れる。中に沈まないようにかき混ぜないのがコツだと言う、北川の鍋奉行ぶりを愛理は十分に楽しんでいた。「そろそろ食べごろだよ」と声が掛かる。
モツがぷるっと膨らんだタイミングで、鍋から掬い上げ、湯気の立つモツをハフハフと口に入れる。噛み込むと弾力があり、旨みの強い脂が口いっぱいに広がった。
「うーん。美味しい。臭みも全く無いし、東京で食べるモツ鍋と全然違う」
愛理が歓喜の声を上げると、北川が嬉しそうに微笑み、解説を始める。
「博多のモツは、生の牛を使うんだ。茹でモツは旨味が落ちてしまうから」
「なるほど、素材から違うんだ、だからこんなに美味しいのね。お酒も進むー。あ、KENさんも食べて、食べて」
さっきから、接待よろしくお世話ばかりして北川の箸が進んでいないように見える。愛理は、ボトルの焼酎を北川のグラスにつぎ足した。
「心配しないで、ちゃんと食べているから、それより僕の事、鬱陶しくない?」
「え?」
「わりと世話好きで、尽くしたいタイプなんだよね。だから、人によっては鬱陶しく感じるのかも……」
そう言って、北川は視線を落とした。