だって、しょうがない
 開いた長財布の中にはクレジットカードが2枚、銀行と郵便局のキャッシュカードがそれぞれ1枚ずつ、それにポイントカードも2枚、一万円札6枚と千円札が2枚。
 札の手前には数枚のレシート。愛理はレシートを取り出しテーブルの上に並べる。直ぐに自分のスマホでカメラに収め、それを長財布に戻す。
長財布も、また背広の内ポケットに仕舞った。

 クレジットカードの請求書はメールだし、カード会社ごとにパスワードの設定があるから見るのは無理か……。

 立場上、自分から離婚を切り出すのは難しいかもしれない。でも、証拠を集めて置けば、何かの役に立つはずだ。
気持ちを持って行く場所はソコにしかない。

 深夜、街が寝静まる時間に何かに取り付かれたように、自分のスマホに残したレシートの写真を見つめた。
 会社近くのコンビニや定食屋のレシート、それに有名コーヒーチェーンのレシートがスマホの画面に写っている。何かが気になり、指でタップして拡大して見ると、そのレシートに違和感を覚え身を乗り出した。

 それは、3日前の日付の印字、店名が三子玉川店、クランチアーモンドチョコフラペチーノとカフェラテが1つずつの記載がある。

 いかにも甘そうなクランチアーモンドチョコフラペチーノを淳が飲むとは思えない。

 ポチポチと自分のスマホに『カフェ 三子玉川店 クランチアーモンドチョコフラペチーノ』と入力。

 クランチアーモンドチョコは、三子玉川店限定商品だというのがわかった。
次にインストアプリを立ち上げ、『#クランチアーモンドチョコフラペチーノ』と入力すると、タグ付けでUPされた写真が次々に表示される。
 3日前の日付になるまでスクロールして、そこから一枚一枚を丁寧に吟味していく。

 もはや、執念とも言える感情に突き動かされていた。
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