だって、しょうがない
少し離れた所にいる女の子は、嬉しそうに愛理へと駆け寄る北川を見て深いため息をつく。その事に良心の呵責を覚えながら、今だけでも幸せで居ようと、愛理は自分を甘やかす事にした。
「KENさん、お待たせしてごめんなさい」
「大丈夫だよ。ほら、まだ、待ち合わせの時間前。あいさんに会いたくて、僕が早く着いちゃったんだ」
そう言いながら、北川は左腕を持ち上げ、袖口を引く。しなやかな腕に巻かれたムーンフェイスの腕時計が、今の時を刻んでいる。
人懐こい笑顔を覗き込むように愛理は顔を上げた。
「お仕事おつかれさま。ごはん食べましたか?」
「いや、あいさんと一緒に食べようと思って」
「良かった、私もまだなの。今日は居酒屋さんにしませんか? 博多は海の幸も豊富なんですよね」
「じゃあ、美味しいお店知っているから案内するよ」
ふたり並んで歩き始めると、少し冷たい秋風が軽くなった髪を撫でる。
「あいさん、寒くない?」
優しい声が降りて来る。
「うん、ありがとう。ちょっと寒いかな?」
と言って、北川の腕に自分の腕を絡め、チラリと上目遣いに様子を窺うと、優しく弧を描いた瞳と視線が合う。それだけで、胸の奥が温かい。
自分でも驚くぐらいの大胆な行動。
でも、残されたふたりの時間を無駄にしたくなかった。
「KENさん、お待たせしてごめんなさい」
「大丈夫だよ。ほら、まだ、待ち合わせの時間前。あいさんに会いたくて、僕が早く着いちゃったんだ」
そう言いながら、北川は左腕を持ち上げ、袖口を引く。しなやかな腕に巻かれたムーンフェイスの腕時計が、今の時を刻んでいる。
人懐こい笑顔を覗き込むように愛理は顔を上げた。
「お仕事おつかれさま。ごはん食べましたか?」
「いや、あいさんと一緒に食べようと思って」
「良かった、私もまだなの。今日は居酒屋さんにしませんか? 博多は海の幸も豊富なんですよね」
「じゃあ、美味しいお店知っているから案内するよ」
ふたり並んで歩き始めると、少し冷たい秋風が軽くなった髪を撫でる。
「あいさん、寒くない?」
優しい声が降りて来る。
「うん、ありがとう。ちょっと寒いかな?」
と言って、北川の腕に自分の腕を絡め、チラリと上目遣いに様子を窺うと、優しく弧を描いた瞳と視線が合う。それだけで、胸の奥が温かい。
自分でも驚くぐらいの大胆な行動。
でも、残されたふたりの時間を無駄にしたくなかった。