だって、しょうがない
 荒い息を繰り返し、甘だるい快感に揺蕩う。そんな愛理の唇や胸元、首筋へをと、北川の唇が優し気にキスの雨を降らしていた。高みにのぼりつめた余韻から体がちょっとした刺激でも敏感に拾い上げ、ピクピクと反応してしまう。恥ずかしさも手伝って、耐え切れず身をくねらせる愛理を北川がクスリと笑う。

「くすぐったかった?」

「うん……」

 愛理もクスクス笑うと、北川の瞳が問いかける。

「いいよね?」

「うん……きて」

 腰に手を添えられて、潤んだ場所へ熱いモノがあてがわれた。薄い皮膜一枚隔てているけれど、誰よりも近い距離にときめいている。
 愛理の中を徐々に、北川が満たし始め、浅い抽挿を繰り返し、やがて最奥までたどり着く。
 なんとも言えない充足感に包まれ、まぶたを開くと、下から見上げた北川の艶のある瞳と出会う。
 その瞳が優しく弧を描いた。そして、声が聞こえる。

「あいさん……好きだよ」

 そう言って、北川は愛理の唇に自分の唇を重ね動き出す。
 それは、”返事をしなくてもいいよ”という合図のようで、言葉に出来ない想いを乗せて、ふたりで舌を絡め合い、深く深く繋がった。
 切なさで胸が痛み、じわりと涙がこぼれる。

 残された時間がさらさらと流れていく。
 
 
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