シャロームの哀歌

シャロームの哀歌

 (ヤー)の名のもとに、戦争は苛烈を極めた。
 土地や人、家畜を奪われ、ときにまた奪い返す。果ての見えない争いに、民も物資も限界まで疲弊していった。

 やがて若き(メレフ)が立ち、賢人(ハハム)とともに最後の聖戦が行われた。

 被害は最小限に(とど)まり、犠牲となったのは国境近くの小さな村が焼けたのみ。
 またたく間に国を勝利に導いた王は神の使いとして讃えられ、側近たちもまた語り継がれるべき英雄となった。

 ようやく訪れた平和(シャローム)に、人々は歓喜し国は次第に活気を取り戻していった。


 そして一年の時が過ぎ――。

< 1 / 14 >

この作品をシェア

pagetop