愛はすぐそばに
卒業式の前の日の夜、僕は手紙を書いた。


何度も何度も考えて決心したこと、


それは浅倉への手紙を書くことだった。



中学2年の時から好きだった。


それなのに、僕にできることはこれくらいしかなかった。



何回も書いては消し、結局書き終わるのに1時間以上かかってしまった。


"こんなにドキドキするのもこれで最後かもしれない"



そう思うと静かに涙が頬をつたっていくのが分かった。



そして、とうとう卒業式はやってきた…。


学校に行くと、みんないつもと変わらずはしゃいでいた。



でもそんな中目についたのは、浅倉だった。


1人で席に座って悲しそうな顔をしながら何かを考えているようだった。


"何を考えてるんだろう"

そう思いながらずっと浅倉を見ていた。



こんなふうに見ていれるのは、最後かもしれないというのに、やっぱり何もすることができなかった。




卒業式が始まった。


浅倉が卒業証書をもらってる間ずっと浅倉の背中を見ていた。



涙が出てきそうで、必死にこらえた。



卒業写真をみんなで撮るとき、浅倉と目が合った。


久しぶりのことだったから悲しくてひきつっていた顔が笑みに変わってしまった。


浅倉には僕がどういうふうに見えたかは分からない。


その瞬間涙が溢れだしてきた。



卒業式が終わって誰もいない教室に入って、僕は昨日書いた手紙を浅倉のかばんのうしろのポケットに入れた。



いつその手紙に気づくかは分からない。


でも、できるだけ見つけにくい場所に入れた。


見つけるかは分からないけど、それだけで満足だった。



もしかばんを捨ててしまえばそれでおしまいかもしれないけど、10年後先に見つけたとしても、

ただこの2年間、僕が好きだったということが伝わってくれればそれで良かった。
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