願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。

あざみ「顔に火傷を負った腫れ物女」

火事と喧嘩は江戸の花。


私は火の女なのかもしれません。

生まれた家を火事でなくし、泣く泣く行き着いた先が国公認の廓でした。

買われた先の見世もまた、私は火事によってなくしました。

そしてその火事により、私は火の女の烙印を押されたのです。

顔の左半面は火傷で爛れ、身体はいくつもの火傷の跡とケロイドでそれはもう醜い有様でした。



こんな私が売り物になるはずもなく、引き取り先の見世の厄介者として毎日顔を隠しながら客取りをしておりました。


前髪で顔半面を隠し、身体は夜の闇に溶け込ませ隠します。


それでも気づくものは多く、馴染み客というのは一人もおりませんでした。



「あぁ、醜いたらありゃしやせん。火が燃え移りやす。近くに寄らないでおくれ」



同じ見世にいる遊女たちは決して私に近づこうとしません。



私は孤独でした。


誰からも愛されず、嫌悪されることが続き、私は奈落の底に叩き落とされました。



鏡をみれば醜い姿をした女が写ります。


私はその女を見るたびに鏡を叩いておりました。


涙を流す姿はますます醜く、吐き気がするほどおぞましいものでした。


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