願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。
こんな私に生きている意味はあるのだろうか。
ふと、そんな疑問を抱いてしまいます。
私は見世の表に出るため、顔半分に化粧を施し、髪を結い上げ、華やかな着物を纏いました。
張見世に立つと格子の向こう側で、男たちが吟味するように女たちを見ていました。
そこに私は含まれません。
いつものことでしたが、今日は特に情けなさと惨めさに襲われます。
居ても立っても居られず、私はその場から立ち去りました。
見世を出ようとすると、楼主に見つかり声をかけられます。
「あざみ、どこへいくんだ! 客捕まえてこい!」
「……外で直接引いてきますので」
そう言って私は逃げるように見世を飛び出しました。
まるで河岸見世の者がやるような客引きしか、私に出来ることはありませんでした。
私のための客ではなく、他の女郎のために客を引いてくるのです。
それが見世にいてもよいという情けをかけてもらえた実態でした。
私自身は見世の利益にならないとわかっている楼主はため息をつくばかりでした。
私は賑わう人々をかき分けるようにして廓を走りました。
人気のないところへと走っていくと、いつしか行き止まりとなる黒いどぶの前まで来ておりました。
遊郭の周囲にめぐらされた溝です。
それはとても深く、幅もありましたので女郎たちがそれを超えて逃げ出すことは不可能でした。
目の前の汚水に私の心臓は圧迫されるかのように強く鼓動を打ちます。