願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。
葵の身体から折檻の跡が消えた頃、見世の者に葵の水揚げの日取りを知らされました。
本来ならばその日に夢物語の計画を実行していたのかと思うと胸が張り裂けんばかりに痛みました。
葵が水揚げされる日の前日、私はいつもどおり張見世に出て格子の向こう側を眺めていました。
もう幾日も格子の向こう側に煌之介は現れません。
この燃え盛る炎のような熱い想いは簡単には消えてくれないようで、喉の奥が熱くなり、胸は締め付けられるように痛みました。
言葉を交わさなくてもいい。
ただ姿を見ることが出来ればそれでいいのです。
私は縋るように両手で格子を掴み、額をあてて固く目を閉じました。
そんな私の手に、大きく包み込むようなやさしいぬくもりが重なりました。
顔をあげるとそこには恋い焦がれた煌之介の姿があり、少しだけ疲れをみせた柔らかな笑みを浮かべているのでした。
私たちはしばらく見つめ合い、手と手を重ね合わせました。
それから部屋へと移り、私たちは向かい合って畳の上に座りました。
煌之介は口元に手を当て、しばらく黙り込んだ後、顔を上げてゆっくりと口を開きます。
「しばらく来れずにすまなかった」
「いえ、あんなことが起こってしまいましたから……」
十五が死に、当初立てられていた計画は泡となって消えました。
煌之介にとって十五はかけがえのない友人であり、それを失った衝撃は大きいものでした。
傷心状態の煌之介は覇気がなく、以前お会いしたときよりも痩せてしまったのか、少し頬が痩けておりました。
私は煌之介に対し、何と言葉をかければよいのかわからず、拳を握りしめ、畳へと目を落としました。
そんな私の手に煌之介は手を伸ばしてそっと上から重ねてくるのでした。