願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。
それから九年、時が流れました。
私は姉女郎につき鍛えられ、今ではこの瞳の物珍しさから、はじめての客となる突き出し待ちがつくようにまでなりました。
この九年、私が折れずに来れたのも十五のおかげでありました。
締め付けられるようなこの胸の痛みを味わせてくるのもまた十五のせいでした。
十五はというと、かつて花魁だった母親に似て美しい青年へと育ち、遊郭の女たちから色に誘われることもよく見かけるようになっていました。
同じ遊郭の者同士の恋は御法度とわかっていながらも、十五の美しい容貌に手を伸ばさずにはいられないのです。
穏やかに遊女たちの誘いをかわすも、それを見ている私としては気が気ではありませんでした。
「葵、お前最近どうした? そんなにピリピリして……」
「別に、何もないわ。十五こそ、随分と姐さん可愛がられてるじゃない」
美しい着物を纏い、髪に簪をさして着飾る姐さんたちに嫉妬をしてしまいます。
私より三つも歳上の十五からすると、姐さん方に比べたらおぼこな娘でしかないのです。
口を尖らせてそっぽを向いていると十五は腹を抱えて笑い出し、私の頭を撫でてきます。
「そうか、お前嫉妬してるんだな」
「もうっ……子供扱いしないで! 私だってもうすぐお客がとれる……いつまでも子供じゃないんだから!」
十五の手を振り払い、私は十五に背を向けました。
すると十五はその場に立ちすくみ、振り払われた手をゆっくりと下ろします。
私が振り返るとそこには切なさを噛み締めたような十五の笑みがありました。