死神?・・は・・・私の・・・?
次の日、出勤すると事務室はあわただしかった。
「どうしたの? 何かあったの?」
「麗香先生・・・林田副婦長と昨日から連絡が取れなくて・・・」
「えっ? 携帯通じないの? ご家族は? 」
「離婚されてお一人のはずです。」
「家に行ってみたら? 事務長と、誰か女性一緒に行ってあげて。」
それから1時間も経たないで、林田の遺体が見つかった。彼女のマンションで・・・。
― イャだ・・・本当に死んじゃった・・・夢じゃなかった・・・
― 私・・・本当に・・・殺しちゃったってこと?・・・イャだ。もう・・・こんなことやめる・・・
― 私が死ねばいいのよね・・・
― それで・・・スティルとはかかわらない・・・
麗香は眠れなかった。
― でも眠らないとスティルに会えない・・・会ってちゃんと終わりにしないといけない。伝えないと・・・
― 亨は今日、当直・・・亨はどう思っているんだろう・・・
― 何考えてるの? バカ! バカ過ぎて・・・もう亨の顔は見たくない・・・
結局一睡もせずに朝を迎えた。
顔を洗い、仕方ないのでいつもより少し濃い目の化粧をして病院に向かった。
診察が始まると忙しさで気がまぎれた。こんな時でも患者はひっきりなしにやってくる・・・
― とにかく・・・仕事をこなそう・・・
「麗香先生、外来患者さん終わりです。」
岸は麗香の顔を見ながらそう告げた。
「あっそう。もう、そんな時間・・・」
「先生・・・お疲れですよね・・・もう上がられては?」
「大丈夫よ。」
「そうですか? 麗香先生も無理しないでくださいね。」
「ええ。」
「林田副婦長、ここのところずっと顔色悪かったんですよ・・・」
「そうなの?」
「はい。大丈夫ですか? って聞いても、“大丈夫よ!”って言うばかりで・・・よく、大丈夫って言うのは大丈夫ではないって言いますよね。だから、麗香先生も無理しないでください。」
「ありがとう。そうね、昨日眠れなかったから・・・お言葉に甘えて家に戻って少し横になるわ。何かあったら連絡ください。」
麗香は同じ敷地内にある家に戻り、ベッドに横たわり目を閉じた。すると、あっという間に眠りについた。
『麗香さん・・・』
『あっ、スティル・・・』
『麗香さん・・・昨日林田さんを死界に送り届けてきました。』
『・・・』
『麗香さん・・・ショックですか?』
『そりゃそうよ。私が殺したのよ。』
『あー・・・それは違いますよ。実は彼女の余命はもう短かったです。ちょっとお二人で背中押しちゃったってとこですかね。』
『えっ? 余命短かったってどういうこと?』
『心臓が悪かったようで、別の病院で治療を受けていました。』
『そうなの?・・・』
『はい。手術を勧められていたみたいです。死界に送る途中で彼女が言っていたのですが、このまま生きてもなにも楽しくないから手術するつもりもなくて、生きているうちにやりたいことやろうと決めて、夫と別れて旦那さん・・・亨先生を誘惑したって。楽しかった。って言ってました。』
『・・・何それ・・・亨は遊ばれたってこと?』
『そのへんは良くわかりませんが・・・死んだことに対して何も未練ないって、最後の願いも無いって言ってました。だから、麗香さんが気に病むことではないですよ。』
『そういっても・・・でも、だったら何で私を殺そうとしたのかしら?』
『良くわかりませんが、嫉妬じゃないですか。単純に麗香さんのことうらやましかったんですよ。きっと・・・』
『そうなの・・・でも・・・私・・・やっぱりこういうことはやめようとおもうの。』
『自分が死んでもですか? 』
『ええ、そうね。』
『・・・そうですか・・・まぁ、まだ生きられますから、ゆっくり考えてください。』
『・・・』
『そうそう、ひとつお伝えが・・・寝なくても僕を呼び出せますからね。』
『そうなの? どうやって?』
『僕のこと考えてもらえば・・・話しかけてくれれば・・・声には出さないで・・・』
『へー、いつも側にいるの?』
『はい。大体・・・死界に誰かを送り届けているとき以外は・・・』
『・・・ねー、もしかして私がお風呂に入っているときとかも側にいるってこと?』
『はい。』
『はいって。簡単に言うじゃない。』
『何か問題でも?』
『見られるのはちょっと・・・』
『えー・・・でも麗香さんは僕と契約しましたから、こっちの世界でいうと結婚したみたいな感じで・・・麗香さんのホクロの位置も知ってます。耳の後ろのホクロとか・・・全部ね。』
『はっ? ウソ。そんな隅々まで見てるの? ダメよ。これからは見ないでね。』
『いまさら遅くないですか? 』
『いいから、見ないと約束して。』
『えー・・・じゃあまあそういうことで・・・』
『全くスティルったら・・・ねー、そう言えばなんだけど・・・私は重婚って感じなの?」』
『フフ・・・まあ、そういう感じですかね・・・でも、麗香さんと旦那さんの間には今は何もないじゃないですか。それと麗香さんが望まなければ・・・僕を呼び出さなければ・・・僕はあなたの前には現れませんから・・・何も起こらない・・・残念なことですが・・・。ということで・・・麗香さん、今日はもう・・・ぐっすりお休みください・・・』
スティルは細くて長い指で、麗香の頬にやさしく触れた。
イズミダレイカ ノ セイゾンニッスウ ハ 330 ニチ
「どうしたの? 何かあったの?」
「麗香先生・・・林田副婦長と昨日から連絡が取れなくて・・・」
「えっ? 携帯通じないの? ご家族は? 」
「離婚されてお一人のはずです。」
「家に行ってみたら? 事務長と、誰か女性一緒に行ってあげて。」
それから1時間も経たないで、林田の遺体が見つかった。彼女のマンションで・・・。
― イャだ・・・本当に死んじゃった・・・夢じゃなかった・・・
― 私・・・本当に・・・殺しちゃったってこと?・・・イャだ。もう・・・こんなことやめる・・・
― 私が死ねばいいのよね・・・
― それで・・・スティルとはかかわらない・・・
麗香は眠れなかった。
― でも眠らないとスティルに会えない・・・会ってちゃんと終わりにしないといけない。伝えないと・・・
― 亨は今日、当直・・・亨はどう思っているんだろう・・・
― 何考えてるの? バカ! バカ過ぎて・・・もう亨の顔は見たくない・・・
結局一睡もせずに朝を迎えた。
顔を洗い、仕方ないのでいつもより少し濃い目の化粧をして病院に向かった。
診察が始まると忙しさで気がまぎれた。こんな時でも患者はひっきりなしにやってくる・・・
― とにかく・・・仕事をこなそう・・・
「麗香先生、外来患者さん終わりです。」
岸は麗香の顔を見ながらそう告げた。
「あっそう。もう、そんな時間・・・」
「先生・・・お疲れですよね・・・もう上がられては?」
「大丈夫よ。」
「そうですか? 麗香先生も無理しないでくださいね。」
「ええ。」
「林田副婦長、ここのところずっと顔色悪かったんですよ・・・」
「そうなの?」
「はい。大丈夫ですか? って聞いても、“大丈夫よ!”って言うばかりで・・・よく、大丈夫って言うのは大丈夫ではないって言いますよね。だから、麗香先生も無理しないでください。」
「ありがとう。そうね、昨日眠れなかったから・・・お言葉に甘えて家に戻って少し横になるわ。何かあったら連絡ください。」
麗香は同じ敷地内にある家に戻り、ベッドに横たわり目を閉じた。すると、あっという間に眠りについた。
『麗香さん・・・』
『あっ、スティル・・・』
『麗香さん・・・昨日林田さんを死界に送り届けてきました。』
『・・・』
『麗香さん・・・ショックですか?』
『そりゃそうよ。私が殺したのよ。』
『あー・・・それは違いますよ。実は彼女の余命はもう短かったです。ちょっとお二人で背中押しちゃったってとこですかね。』
『えっ? 余命短かったってどういうこと?』
『心臓が悪かったようで、別の病院で治療を受けていました。』
『そうなの?・・・』
『はい。手術を勧められていたみたいです。死界に送る途中で彼女が言っていたのですが、このまま生きてもなにも楽しくないから手術するつもりもなくて、生きているうちにやりたいことやろうと決めて、夫と別れて旦那さん・・・亨先生を誘惑したって。楽しかった。って言ってました。』
『・・・何それ・・・亨は遊ばれたってこと?』
『そのへんは良くわかりませんが・・・死んだことに対して何も未練ないって、最後の願いも無いって言ってました。だから、麗香さんが気に病むことではないですよ。』
『そういっても・・・でも、だったら何で私を殺そうとしたのかしら?』
『良くわかりませんが、嫉妬じゃないですか。単純に麗香さんのことうらやましかったんですよ。きっと・・・』
『そうなの・・・でも・・・私・・・やっぱりこういうことはやめようとおもうの。』
『自分が死んでもですか? 』
『ええ、そうね。』
『・・・そうですか・・・まぁ、まだ生きられますから、ゆっくり考えてください。』
『・・・』
『そうそう、ひとつお伝えが・・・寝なくても僕を呼び出せますからね。』
『そうなの? どうやって?』
『僕のこと考えてもらえば・・・話しかけてくれれば・・・声には出さないで・・・』
『へー、いつも側にいるの?』
『はい。大体・・・死界に誰かを送り届けているとき以外は・・・』
『・・・ねー、もしかして私がお風呂に入っているときとかも側にいるってこと?』
『はい。』
『はいって。簡単に言うじゃない。』
『何か問題でも?』
『見られるのはちょっと・・・』
『えー・・・でも麗香さんは僕と契約しましたから、こっちの世界でいうと結婚したみたいな感じで・・・麗香さんのホクロの位置も知ってます。耳の後ろのホクロとか・・・全部ね。』
『はっ? ウソ。そんな隅々まで見てるの? ダメよ。これからは見ないでね。』
『いまさら遅くないですか? 』
『いいから、見ないと約束して。』
『えー・・・じゃあまあそういうことで・・・』
『全くスティルったら・・・ねー、そう言えばなんだけど・・・私は重婚って感じなの?」』
『フフ・・・まあ、そういう感じですかね・・・でも、麗香さんと旦那さんの間には今は何もないじゃないですか。それと麗香さんが望まなければ・・・僕を呼び出さなければ・・・僕はあなたの前には現れませんから・・・何も起こらない・・・残念なことですが・・・。ということで・・・麗香さん、今日はもう・・・ぐっすりお休みください・・・』
スティルは細くて長い指で、麗香の頬にやさしく触れた。
イズミダレイカ ノ セイゾンニッスウ ハ 330 ニチ