死神?・・は・・・私の・・・?
「亨先生! 麗香先生に反応がありました。」
「麗香、麗香・・・」
「あー良く寝た。あら、お二人揃ってどうしたの?」
「麗香・・・何言ってるんだ。何も覚えていないのか? お前、キックボードに激突され頭打って、それが原因で脳内出血になり1週間意識なかったんだぞ。」
「そうなんだ・・・それで、亨が手術してくれたのね。」
「あっ、ああ。」
「さすが亨ね。スッキリしてる。もう大丈夫。直ぐにでも仕事出来る。」
「何言ってるんだ。まだ血の塊が頭の中に残っている。」
「ふーん、取り残したの? 亨のくせに? なら検査してもう一度手術してよ。」
「取れない場所だったんだよ。手術をもう一度しても取れない場所だ。」
「亨でも無理なことあるの? 」
「あっ、ああ、でも意識が戻ったんだ。検査はしよう。どこかの時間空けさせるから・・・林田君手配してくれるか。」
「あっ、は はい、わかりました。」
無理くり笑顔を作ったメガネをかけてお団子頭の林田副婦長は、そそくさと病室を出て行った。
「ねえ、悪いんだけど心療内科の(きし)さん呼んでくれる? それとお水少し飲みたい。」
「いいけど、どうして岸さんなの?」
「最近、私の案件は殆ど岸さんと共有しているの。だから、この一週間のこと聞きたいのよ。」
「あー、そうか。無理するなよ。まだ目覚めたばかりなんだぞ。それと、まだ起き上がるのもダメだからな。」
「はい、わかりました。セ・ン・セ! 」
― 残念でしたねー亨。私、生き返りましたよ・・・

30分後、亨が病室に入って来た。
岸は亨を見て直ぐに話しをストップして亨に頭を下げた。
「もう話は終わったか?」
「はい。麗香先生あまりにもお元気なので驚きました。一週間も意識が無くてあんな怪我をされたなんてウソみたいです。」
「そうだね。元気そうに見える。でも血栓はまだある。今だけ・・・一時的なものかもしれない。頼むから疲れさせないでくれよ。」
「もー、亨先生優しい!」
岸は明るい声で言った。
そして亨は苦笑いをして麗香を見た。
「麗香、今日16:00からCT検査をする。」
「ありがとう。」
丁度そこに検査技師の袴田(はかまだ)が病室に入って来た。
袴田はビクっとして亨にペコッと頭を下げた。
「袴田君どうしました?」
亨も袴田を怪訝な顔で見た。
「あー、えーっと、麗香先生に呼ばれまして。」
「そう。私が呼んだの。私の検査、袴田君にも見てほしくて。」
「はっ? なんだよ。俺を信用してないのかよ。」
「そんなことない。袴田君今脳検査についての論文題材探しているって聞いていたから、一つでも多くの検査を見てほしいなって思って。それにもし私の血栓が無くなっていたら珍しい症例でしょ。」
「そうだけど、なんでそんなに無くなっていると思うんだ?」
「こんなにスッキリしているんだもの。感覚よ。」
「医者らしくないこと言うな。わかっているとは思うけど感覚と現実は違うからな・・・まあいい、好きにしなさい。でもね、そんな都合よく血栓が無くなることはない。あっても落ち込むなよ。」
「なんだか、無くなっていない方かいいみたいな言い方じゃない?」
「そんなことはないよ。」
「わかりました。検査結果が楽しみだわ。」
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