死神?・・は・・・私の・・・?
その夜、麗香が眠りについてから2時間程経った頃・・・声が聞こえた。
『お久しぶりです。麗香さん。』
『えっ? 誰? あっ、死神・・・』
『麗香さん、その呼び方は好きではありません。僕と麗香さんは契約したんだ。僕の名はスティル、日本名だと(しずか)かな。お好きな方でいいんで死神はやめてください。』
『あなたはどこの国の生まれなの? 』
『あなたの世界とは違うので・・・国というのは特に・・・』
『そう・・・ならスティルにします。スティル、それで何の用? 』
『冷たいなー・・・しかたないか・・・ではご説明を。あなたは、ある人のことを“死ねばいい”と思いましたね。今日です。わかりますよね。林田さんのことをです。そして、同時期に、もう一人林田さんを死んで欲しいと思った人がいます。』
『えっ? 誰ですか? もしかして・・・』
『そうです。あなたの旦那さんです。』
『そんな・・・』
『旦那さん、あなたを殺せというようなことを言われすぎて、怖くなったようですね。』
『・・・林田副婦長は私を殺せと・・・それであんなことを・・・』
『ということで、これから24時間以内に林田さんは死にます。ありがとうございました。』
『ありがとうございました・・・って・・・』
『あなたは早速僕のために指令を実行してくれました。』
『ちょっと待って・・・私のあの言葉は、本心ではないというか・・・言うでしょ、ちょっと頭に来た時に・・・なんていうか・・・言葉のあや?』
『うーん・・・そういう気持ちの機微、僕にはわかりません。まーいいじゃないですか。あなたにとっての天敵がいなくなるんだ。どんな風に林田さんが死ぬか・・・見ていてくださいよ。では。』
『ちょっと、待ってよスティル! スティル!』
麗香が必死に呼び止めても、スティルは消えた。

麗香は重い気持ちで朝を迎えた。
― 昨夜のは夢よね・・・
と、思いながらも仕事は待ってくれない。朝から途切れなく患者が押し寄せた。スティルの言ったことを考える暇もなく患者の対応に没頭し、昼も食べられず、気が付いたら15時になっていた。
「外来の患者さん終わりです。やっと終わりましたねー。お疲れ様です。」
「ホント忙しかったわ。あっ、岸さん、今日林田副婦長見かけないけど?」
「お休みみたいですよ。」
「えっ?・・・」
― 来ていない?・・・
― 亨は・・・今日は出勤している。一緒じゃないということね・・・
― 大丈夫かな? あれは・・・夢よね・・・夢であって・・・
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