長嶺さん、大丈夫ですか?
「ひどいなぁ」

 ハッと振り向くとそこにいたのは、

「なっ、長嶺さん……!」

 長嶺さんは私の左隣に座って、こちらに体を向けた。

「そんなこと言われちゃったら、なんとかして『生理的に好き』って言わせたくなるね。」

 そう言って色っぽい笑顔で私を覗き込むクズ上司。

「っ、そういうところです!」

 長嶺さんは「んー?」と首をひねってとぼけてみせる。 このあざとい仕草にもまたイラっとして、腹いせのようにビールを流し込む。

「プハッ……どうしてそんな簡単に歯の浮くようなセリフを言っちゃうんですか? 翻弄される女性たちが気の毒です!」

「大丈夫だよ、みんな遊びってわかってる子ばっかりだから。 俺、そうじゃない子を見分ける系の鼻は利くんだよねー」

 まったく理解できなくて、私は首を横に振りながらまたお酒を口に含んだ。

「……つーか飲み過ぎじゃない? 大丈夫?」

「らいじょうぶれす!!」

 あら? いま口が回らなかった。
 まぁいいや。 もうどうでもいい。 この機会に言いたいこと、全部言ってやろう!

「この際だから言わせてもらいますが! 長嶺さんは顔が良すぎるんです!」

「……ん?」

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