長嶺さん、大丈夫ですか？

「お前、やってくれたな」

「すみません、何のことだか……」

「すっとぼけるな！」


　部長が机をバァン！と叩いた。


　隣の東さんが「あっ。パワハラ」とぼやいた。


「シトミズさんから連絡があったんだよ！〝娘の麗華がおたくの長嶺って社員にセクハラをされました〟と」


　え！？と思わず声をあげてしまって、慌てて両手で口をふさぐ。

　
「花ちゃん、なにか知ってるの？」

「昨日行った取引先です。　娘さん、あからさまに長嶺さんに好意があって昨日も長嶺さんをお食事に誘ってたんですけど、長嶺さんはそれを断って……」

「は…？まさか、腹いせに？」


　昨日私たちが去った後の麗華さんの様子を思い出して、胸が騒ぎ始める。


「よりによって社長の大切なお嬢さんに手を出すなんて言語道断だ！！」

「部長、やってません。　断じて。　社長の娘さんには指一本触れてません」


　あくまで冷静にしっかりとした口調で否定する長嶺さんに、部長のボルテージは上がるばかり。