長嶺さん、大丈夫ですか?
「お前のことだ、なにか意図せず不快なことを言ったんじゃないのか!?」


 そんな……! ろくに話も聞かず決めつけるなんて、ひどい!

 耐えかねた私は応接室の扉をあけた。


「あっ、花ちゃん!」
 

 不意をつかれた部長と目があう。


「部長! 話を聞いてください!」

「花樫? 突然入ってくるな!」


 苛立ちを含んだ部長に負けじと、反論の言葉を口にしようとしたとき。


「申し訳ありませんでした!」


 長嶺さんが頭を下げた。


「気をつけていたつもりでしたが、なにかお嬢さんを嫌な気持ちにさせてしまうことがあったのかもしれません。ご迷惑おかけして申し訳ありません」

「長嶺さん……!謝る必要ないですよ!だって、」

「花樫さん」


 長嶺さんが珍しくしかりつけるような口調で呼んだので、私は押し黙るしかない。


「部長。今から直接謝罪に行かせてください」

「ああ、そうしてくれ。これ以上粗相するんじゃないぞ!」

「はい」


 長嶺さんはもう一度頭を下げると、足早に応接室を出ていく。
 

「わっ、私も行きます!」


 私も一応頭を下げると、部長はフンッ、と怒りを逃がすように鼻息を吹いた。




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