長嶺さん、大丈夫ですか?
 そして私たちは急いで荷物をまとめ、いつものように社用車に乗りこむ。


「あー、やられた……ここまでされるとは」


 長嶺さんのそのぼやきで、冷静に見えるけど内心相当ショックを受けてるんだろうと察しがついた。
 社長の娘への溺愛っぷりからして、相当ご立腹だろう。
 腕に恐い虎を飼ってるあの社長が怒ったらどんなに怖いだろうと、身が縮こまるような思いがした。


「迷惑かけてごめんね、花樫さん」

「そんな、迷惑だなんて……長嶺さんのせいじゃないですよ」


 長嶺さんは困ったように笑う。
 

「俺が殺されそうになったら救急車よろしく」


 そんな大げさな、と言うべきところなんだろうけど。
 

「……わかりました」


 ありえなくない想定に、私は喉をごくりと鳴らした。



 

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