長嶺さん、大丈夫ですか?
 そして私たちが到着すると社長は、木刀を背負って現れた。


「てめぇゴルァ!!どの面下げて来やがった!!あ゛あ!?」


 振り下ろされた木刀は私たちの横にある観葉植物の鉢を叩き割った。
 咄嗟に長嶺さんが私の前に立ってくれたけど、想定してたとはいえ任侠映画顔負けの展開に、さすがの長嶺さんも後ずさっている。


「あの……麗華さんは?」

「麗華はお前に会いたくないと言っている。 あれからひどく傷ついていて、ずっと泣いてるんだ……!」

 
 そういう社長は娘の姿を思い出したのか、涙を滲ませる。

 
「どうしてくれるんだ! うちの大事な娘をきずものにしやがって!!」
 
 
 そう言ってビシィッと木刀を長嶺さんの眼前につきつける。
 

「っ……、」


 珍しく長嶺さんが言葉に詰まっている。
 ここは私が話した方がいいかもしれない。
 私は長嶺さんの後ろからおずおずと顔を出した。


「あの……麗華さんは長嶺さんになにをされたと……?」


 社長さんはズビッと洟をすする。


「突然抱きしめられて唇を奪われ、麗華がやめてくださいと言ったにもかかわらず両手首を拘束されていいようにされたと……!」


 社長はクッ…と悔しさを滲ませるような顔をした。


「……いいように?」

「口では言えないようなことだ!」


 私と長嶺さんは顔を見合わせる。


「長嶺さんと麗華さん、二人きりになったことありましたっけ…?」

「俺が席を外した時にされたと言っている」
 

 うん、やっぱり麗華さん私の存在を忘れてるな?

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