長嶺さん、大丈夫ですか?
「信じらんねぇ、最初の契約であんな社長にビビってた子が……あっはは!」

「っ、もう、忘れてください……!」


 自分でも信じられない。 あんな言わなくていい啖呵を切ったところで、自分の恥をさらして社長の反感を買い、関係が縁遠くなって損しかないことはわかり切ってるのに……

 どうしちゃったの私。 らしくない。


「はー、無理だね。忘れらんない。かっこよすぎでしょ」


 〝かっこよすぎ〟という単語に違和感を覚えて、長嶺さんを見る。


「俺、花樫さんほどかっこいい女の子に会ったの初めてかも」


 長嶺さんのはじける笑顔に

 胸がどうしようもなく、ギュッとなった。

 それだけで恥ずかしさとか、悔しさとか憤りとか

 胸の内にあった負の感情すべてが、どうでもよくなって

 なんだか泣きそうになるくらい、温かくなった。


 ……そっか。

 私は、どうしても長嶺さんを助けたかったんだ。


「なんか感動しちゃったわ。 いい後輩に恵まれたなぁ、俺。 ありがとうね、花樫さん。本当に」


 この人をすべての理不尽から守りたい、なんて思っちゃうくらいには


「あ。お礼に処女貰ってあげようかー?つって」



 私、長嶺さんが好きなんだ。
 


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