長嶺さん、大丈夫ですか?
初めての恋の終わらせ方。
落ちた書類を拾おうとして、不意に手が触れた。
それはいつも通り騒がしい営業所内でのことで、はっと視線がぶつかったのは例の上司で。
「……っとー、ごめんねー」
長嶺さんの笑顔は通常運転。
だから、きっとこの違和感を感じ取れるのは私だけ。
「……いえ。こちらこそすみません」
互いに体をデスクに向き直して、業務に戻る。
パチパチとキーボードを叩きながら、画面の矢印に視線を巡らせながら、どうしたって意識は隣のデスクにいってしまう。
だって昨日私は、
――長嶺さんを好きになってしまったみたいです
隣の人に告白をしたのだから。
頭の中が昨日に引きずり込まれ、埋め尽くされて、次に打ちこもうとしていた日本語が思い出せなくなる。
『え。無理』
……これは、長嶺さん(真顔)のお返事。
『ごめん、無理。花樫さんだけはほんと無理。』
私は秒でフラれた羞恥心と信じられないぐらい真顔だった長嶺さんを思い出して、グッと奥歯を噛みしめる。
いや、言い方ーーー!!
いくらなんでも酷すぎませんか!
もっとあるでしょう!!
てか花樫さんだけはって、なに!?
どうして私だけは無理なの!?
『あ、すいません……』
って私もなぜか謝っちゃって、その後の車中の気まずさったらない。